最初に確認した資料と記事で扱える情報

本記事では、株式会社ispaceが2026年5月15日に公表した「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」と「2026年3月期 通期決算説明資料」を確認しました。 決算説明資料は全50ページ、決算短信は全19ページです。

資料から扱える情報は、売上高、会社独自指標のプロジェクト収益、補助金収入、損益、販売管理費、前渡金、有形固定資産、契約負債、キャッシュフロー、ミッション別の契約・助成金、開発スケジュールです。 地域別売上、サービス別利益率、顧客別売上、契約別採算、固定費・変動費の内訳は資料には記載されていません。

結論:ispaceは何で稼ぐ会社なのか

ispaceは、顧客の観測機器や実験装置などを月へ運ぶ「ペイロード輸送」、月面ミッションの開発受託、政府等の補助事業を現在の主な収益源とし、将来は月周回衛星を使った通信・測位・観測データサービスの事業化を目指す会社です。

現在の稼ぎ方

月面輸送契約、開発受託契約、政府等の補助事業です。

売上の特徴

契約時に全額計上するのではなく、履行義務の進捗などに応じて売上を認識します。

利益の状況

開発費や原価が売上を上回っており、2026年3月期は営業赤字です。

資金の支え

営業活動の現金流出を、増資や借入による財務キャッシュフローで補っています。

ispaceを一言で説明すると

ispaceは、月着陸船(ランダー)や月面探査車(ローバー)を開発し、顧客の荷物を月まで運ぶ輸送サービスと、将来の月面・月周回データサービスの事業化を目指す会社です。 会社は事業を「月面開発事業」の単一セグメントとして開示しています。

現在の中心

顧客のペイロードを月へ輸送するサービスと、各ミッションの開発です。

収益指標

売上高に補助金収入を加えた「プロジェクト収益」も開示しています。

利益段階

開発費用が先行しており、2026年3月期は営業損失を計上しました。

資金構造

営業CFの赤字を増資や借入による財務CFで補っています。

2026年3月期の売上高は33億7百万円、政府等からの補助金収入を加えたプロジェクト収益は58億90百万円でした。 営業損失は115億80百万円です。売上高だけでなく、補助金、開発費、資金調達を一体で読む必要があります。

何を売っている会社なのか

ispaceが提供する中心的なサービスは、顧客の荷物である「ペイロード」を自社グループのランダーやローバーへ搭載し、月まで輸送するサービスです。 ペイロードには観測機器、実験装置、ローバーなどが含まれます。会社は、打上げから月面輸送、搭載に向けた技術的な助言、月面到着後の実験やデータ通信までを含む契約を説明しています。

区分 資料で確認できる内容
ペイロードサービス 顧客の機器・物資をランダーやローバーに搭載し、月面または月周回軌道へ輸送
ランダー開発 月面着陸船の設計、製造、試験、打上げ準備、運用
ローバー関連 月面探査車の開発・輸送、月面での探査やデータ取得
月周回衛星 通信・測位・観測・宇宙状況把握などのデータサービスを検討
開発受託・補助事業 SBIR、宇宙戦略基金などに基づく研究開発・実証

一般消費者向けの量産品を販売する事業ではありません。契約ごとにミッション、搭載物、開発内容、打上げ時期が異なるプロジェクト型のビジネスです。 サービス別の売上高や利益率は資料には記載されていません。

製品・サービスはどこで使われるのか

ペイロードサービスは、月面での資源探査、科学観測、技術実証、機器の性能確認などに利用されます。 資料では、月面の水資源探査、高精度着陸、ラマン分光器による観測、月面探査システム向けの三次元画像生成などの案件が示されています。

将来構想であるルナ・コネクトサービスでは、月周回衛星を利用した通信・測位に加え、観測やSSA(宇宙状況把握)等のデータサービスも検討されています。 ただし、これら将来サービスの具体的な料金、顧客数、売上計上開始時期は資料には記載されていません。

誰が顧客なのか

資料から確認できる顧客・関係機関には、政府機関、宇宙機関、大学、研究機関、民間企業があります。 具体例として、経済産業省のSBIR、JAXAの宇宙戦略基金、NASAのCLPS、欧州宇宙機関の関連プロジェクト、東京科学大学、海外の宇宙探査企業や大学との契約が示されています。

官需と民需の両方を対象としていますが、2027年3月期のプロジェクト収益は日本の補助金が主要なドライバーになると説明されています。 顧客別売上高、顧客集中度、契約ごとの利益率は開示されていません。

「獲得済」と「潜在的需要」は分けて読む

決算説明資料は、契約・採択・予算確保済みの案件と、覚書や中間契約に基づく潜在的需要を分けています。潜在的需要は契約締結や金額の実現を保証するものではありません。

材料・製造から販売までのバリューチェーン

ispaceのバリューチェーンは、顧客との契約、ミッション設計、ランダー・ローバー・衛星の開発、部材調達、製造・試験、打上げ、軌道上運用、月面輸送、データ提供まで長期間にわたります。 財政状態では前渡金、有形固定資産、契約負債などにこの構造が表れています。

flowchart LR A["顧客・政府機関との契約や採択"] --> B["ミッション設計・開発"] B --> C["部材調達・前渡金"] C --> D["ランダー・ローバー・衛星の製造と試験"] D --> E["打上げ・軌道上運用"] E --> F["月面・月周回への輸送"] F --> G["履行進捗に応じた売上高"] A --> H["補助金収入"] G --> I["プロジェクト収益"] H --> I

主要材料、仕入先、製造工程別の原価、打上げサービス会社への支払条件は資料には記載されていません。 図は開示内容を投資初心者向けに整理した概念図です。

売上収益が生まれるまでの流れ

売上高は、契約したサービスの履行義務をどの程度果たしたかに応じて認識されます。 ミッション2では、2025年1月から原価回収方式ではなく、履行義務の進捗度に基づいて収益を認識する方法へ変更されたと説明されています。

flowchart TD A["ペイロード契約・開発受託契約"] --> B["契約負債・前受金の受領"] B --> C["設計・製造・試験等の履行"] C --> D["進捗度や契約条件に基づく売上高"] E["政府等の補助事業"] --> F["補助金収入・営業外収益"] D --> G["プロジェクト収益"] F --> G D --> H["売上原価を控除"] H --> I["売上総利益または売上総損失"]

契約金額が大きくても、契約締結時に全額が売上高になるわけではありません。 開発の進捗、契約変更、打上げ時期、顧客移行などによって計上時期が変わります。

主力事業と売上構成

ispaceは月面開発事業の単一セグメントであり、製品・サービス別の売上構成は開示していません。 そのため、セグメント構成ではなく、売上高、補助金収入、プロジェクト収益の関係を確認します。

項目 2026年3月期 2025年3月期 増減
売上高 33億7百万円 47億43百万円 30.3%減
補助金収入 25億83百万円 2億28百万円 増加
プロジェクト収益 58億90百万円 49億71百万円 18.4%増
営業損失 115億80百万円 97億95百万円 赤字拡大
当期純損失 81億52百万円 119億45百万円 赤字縮小

プロジェクト収益は会社が事業進捗を示すために使用する指標で、売上高に政府等からの補助金収入を加えています。 日本基準の損益計算書上の売上高とは異なるため、混同しないことが重要です。

ispaceの売上構成はどうなっている?

結論として、ispaceは月面開発事業の単一セグメントであり、サービス別・地域別の売上構成比は開示していません。そのため、IR資料から確認できる「売上高」「補助金収入」「プロジェクト収益」の関係を使って収益の構成を読み解きます。

項目金額プロジェクト収益に占める比率意味
売上高33億7百万円約56.1%顧客契約の履行に基づく会計上の売上
補助金収入25億83百万円約43.9%政府等の補助事業による営業外収益
プロジェクト収益58億90百万円100.0%売上高と補助金収入を合計した会社独自指標

比率は公表値から計算した編集部計算です。これは製品別売上構成ではなく、会社が示すプロジェクト収益を会計上の売上高と補助金収入に分けたものです。サービス別、顧客別、地域別の構成比は開示資料からは確認できません。

海外・地域別売上をどう読むか

今回の決算短信と決算説明資料には、国・地域別の売上高を一覧化した表は確認できません。 日本、米国、欧州の各拠点でミッション開発や営業活動を行っていることは説明されていますが、地域別売上比率は資料には記載されていません。

契約金額を円換算する際にTTMレートを用いた説明があり、外貨建て案件は為替によって円表示額が変わる可能性があります。 ただし、通貨別売上高、為替感応度、為替差損益の案件別内訳は資料には記載されていません。

利益が生まれる仕組み

日本基準の損益計算書では、売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を求め、販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を求めます。 2026年3月期は売上原価が売上高を上回り、売上総損失を計上しました。

項目 2026年3月期 売上高比
売上高 33億7百万円 100.0%
売上原価 61億60百万円 約186.3%
売上総損失 28億53百万円 約86.3%の損失
販売費及び一般管理費 87億26百万円 約263.9%
営業損失 115億80百万円 約350.2%の損失

売上原価率などは公表された千円単位の数値から計算した編集部計算です。 ランダーのエンジン変更とスケジュール変更に伴う損失が売上原価へ計上されたことも説明されています。

ispaceの利益率は高い?営業利益率と粗利率を確認

2026年3月期のispaceは、利益率が高い会社ではありません。売上原価が売上高を上回っているため売上総損失となり、販管費も加わって営業損失が拡大しています。

指標2026年3月期初心者向けの意味
売上総利益率約マイナス86.3%売上100円に対して、原価段階で約86円の損失が出ている状態
営業利益率約マイナス350.2%売上100円に対して、営業段階で約350円の損失が出ている状態
売上原価率約186.3%売上を上回る原価が計上されている状態
販管費率約263.9%研究開発費や人件費などの負担が売上規模に対して大きい状態

利益率が低い主な理由

月面輸送は、設計、部材調達、製造、試験、打上げ準備などの費用が先に発生する長期プロジェクトです。さらに、ランダーのエンジン変更やスケジュール変更に伴う損失が売上原価へ計上されたことも説明されています。

利益率改善のために確認したいこと

今後は、ミッションの進捗に応じた売上計上、開発スケジュールの安定、契約額の収益化、原価超過の抑制、複数ミッションへの固定費分散が進むかを確認する必要があります。ただし、具体的な黒字化時期や目標利益率は、今回確認した資料だけでは断定できません。

価格・数量・需要が利益を動かす構造

ispaceの収益は、量産品の販売個数よりも、契約案件数、各契約金額、ミッションの進捗度、補助金の認定・受領、打上げスケジュールに左右されます。 1件の大型案件やスケジュール変更が年度業績へ大きく影響する構造です。

契約金額

ペイロード、開発受託、補助事業ごとに金額が異なります。

進捗度

契約上の履行進捗によって売上計上時期が変わります。

スケジュール

エンジン変更や打上げ延期は売上・原価・損失計上へ影響します。

補助金

補助金は売上高ではなく営業外収益ですが、プロジェクト収益に含まれます。

ミッション3のプロジェクト収益総額は215億円、ミッション4は319億円、ミッション5は91億円と説明されていますが、全額の契約・受領や計上を確約する数値ではないものが含まれます。

固定費・変動費・利益率の考え方

費用は、ミッションの性格によって研究開発費または売上原価へ計上されます。 2026年3月期は商業化ミッションが中心となり、開発費用の多くが売上原価へ移ったため、研究開発費は前期から減少しました。

販売管理費の項目 2026年3月期 2025年3月期 増減率
研究開発費 39億28百万円 77億30百万円 49.2%減
給料及び手当 18億44百万円 15億22百万円 21.2%増
その他 29億53百万円 27億86百万円 6.0%増
販売管理費合計 87億26百万円 120億39百万円 27.5%減

研究開発費が減ったことだけで開発活動が縮小したとは判断できません。費用の計上区分が売上原価へ移った影響があるため、売上原価と研究開発費を合わせて確認する必要があります。 固定費と変動費の詳細な内訳は資料には記載されていません。

ispaceはなぜ赤字?決算初心者向けに理由を整理

ispaceが赤字である最大の理由は、売上が本格化する前に、複数の月面ミッションへ多額の開発費・原価・人件費を投入しているためです。

開発費が先行

ランダー、ローバー、衛星の設計・製造・試験に費用がかかります。

売上計上に時間差

契約金額が大きくても、進捗や契約条件に応じて段階的に売上を計上します。

スケジュール変更

エンジン変更や打上げ延期が原価、損失、資金需要へ影響します。

固定費負担

研究開発、人員、拠点、試験環境などを維持する費用が発生します。

2026年3月期は、売上高33億7百万円に対して売上原価61億60百万円、販売費及び一般管理費87億26百万円となり、営業損失115億80百万円を計上しました。赤字の大きさだけでなく、どのミッションの進捗で将来の売上が増えるのか、原価超過が抑えられるのかを継続して確認することが重要です。

設備投資型ビジネスとしての特徴

ispaceはランダー、ローバー、月周回衛星、試験設備、拠点設備などへ資金を投入する開発型ビジネスです。 2026年3月期末の有形固定資産は72億18百万円で、前期末の48億59百万円から増加しました。

増加要因として、本社移転に伴う建物付帯設備と工事費用、ミッション2.5およびミッション5で使用するリレー衛星の開発進捗が説明されています。 有形固定資産取得による支出は20億60百万円でした。

flowchart LR A["増資・借入・契約金"] --> B["部材前渡金"] A --> C["有形固定資産の取得"] B --> D["ランダー・衛星等の開発"] C --> D D --> E["打上げ・サービス提供"] C --> F["減価償却・将来費用"] E --> G["売上高・データ取得"]

ミッションごとの総開発費、設備能力、資産の耐用年数、投資回収期間は資料には記載されていません。

在庫・受注・生産の関係

一般的な製造業の棚卸資産よりも、ispaceでは前渡金、長期前渡金、建設仮勘定、契約負債などを確認することが重要です。 2026年3月期末の短期・長期前渡金合計は95億7百万円で、前期末の66億18百万円から増加しました。

会社は、主に新ミッション3および新ミッション5の部材調達に伴って前渡金が増加したと説明しています。 契約負債と前受金の合計は7億54百万円で、前期末の26億95百万円から減少しました。

受注残と同じではない

決算説明資料に示される獲得済契約・助成金の未計上額と、貸借対照表の契約負債は意味が異なります。契約負債は会計上、顧客から対価を受け取ったものの、まだ履行していない義務に関係する項目です。

キャッシュフローと投資の関係

2026年3月期は、本業と開発活動による現金流出を、増資と借入による資金調達で補いました。 期末の現金及び現金同等物は296億90百万円となり、前期末から165億73百万円増加しました。

キャッシュフロー 2026年3月期 主な内容
営業活動によるCF 135億68百万円の支出 税引前損失、長期前渡金増加など
投資活動によるCF 18億25百万円の支出 有形固定資産取得20億60百万円など
財務活動によるCF 314億47百万円の収入 株式発行による収入181億95百万円など
期末現金同等物 296億90百万円 増資・借入後の手元資金
flowchart TD A["株式発行・借入"] --> B["財務CFの収入"] B --> C["期末現金の確保"] C --> D["人件費・開発費・前渡金"] D --> E["営業CFの支出"] C --> F["設備・衛星等の取得"] F --> G["投資CFの支出"] E --> H["将来ミッションの進捗"] G --> H

営業CFと投資CFを単純合計した資金流出は153億93百万円です。これは記事内の理解用計算であり、会社が定義したフリーキャッシュフローではありません。

会計指標の読み方(日本基準・プロジェクト収益など)

ispaceの決算は日本基準で作成されています。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は会計基準に基づく財務指標です。 一方、「プロジェクト収益」は、売上高に政府等からの補助金収入を加算した会社独自の管理指標です。

指標意味2026年3月期
売上高顧客との契約に基づく会計上の売上33億7百万円
補助金収入営業外収益として計上25億83百万円
プロジェクト収益売上高+政府等の補助金収入58億90百万円
営業損失売上総損益から販管費を反映した本業段階の損失115億80百万円
経常損失営業外収益・費用を含む損失81億41百万円

他社比較では、ispaceのプロジェクト収益を他社の売上高と直接比較しないことが重要です。 また、補助金収入が増えると経常損失や当期純損失が改善する場合がありますが、営業損益とは区別して読みます。

この会社の競争力をどう確認するか

一次資料から確認できる事業基盤は、日米欧の拠点、複数ミッションの開発、政府・宇宙機関・大学・民間企業との案件、ランダー・ローバー・月周回衛星の開発経験です。 さらに、ミッション1とミッション2の実施経験を次期モデルULTRAへ反映する方針が示されています。

ただし、これらが競合企業より優れていると断定するには、着陸成功率、輸送能力、価格、納期、契約継続率、技術性能、保険条件などの比較が必要です。 今回の資料だけで競争優位を断定することはできません。

確認すべき成果

契約額だけでなく、PDRなどの審査通過、構造モデル・フライトモデルの試験、打上げ、軌道投入、月面着陸、ペイロード運用、データ提供までの実績を段階ごとに確認します。

収益構造が抱えるリスク

最大の特徴は、長期間の開発と大きな先行費用を必要とする一方、技術・契約・打上げ・政策・資金調達の各段階で不確実性があることです。 ミッション2は月面軟着陸が未達となり、米国ミッションはエンジン変更とランダー統合によりスケジュールが変更されました。

技術リスク

試験、打上げ、航行、着陸、月面運用の各段階で未達の可能性があります。

スケジュール

延期は売上計上、原価、契約条件、資金需要へ影響します。

契約・補助金

審査や契約変更により金額や受領時期が変わる場合があります。

資金調達

営業CFが赤字の間は増資・借入など外部資金への依存が続きます。

希薄化・負債

株式発行は1株価値の希薄化、借入は利払い・返済負担につながります。

顧客集中

大型の政府案件や特定ミッションの変更が年度業績へ大きく影響します。

競合比較するときの視点

資料には競合企業との比較表や市場シェアは記載されていません。 月面輸送企業を比較するときは、会計数値だけでなく、ミッションの技術段階と契約の確度をそろえる必要があります。

比較項目 確認する意味
ミッション実績 打上げ、航行、着陸、月面運用のどこまで達成したか
ペイロード能力 輸送可能重量、搭載容積、軌道・着陸地点の対応範囲
契約の確度 正式契約、採択、予算確保、覚書、中間契約を区別する
売上認識 進捗基準や契約条件が企業ごとに異なる可能性を確認する
開発費と現金 営業CF赤字、設備投資、手元資金、資金調達余力を比較する
政府依存度 補助金・宇宙機関案件と民間案件の構成を確認する
将来サービス 輸送だけでなく通信・測位・データ事業の進捗を確認する

ispaceのプロジェクト収益には補助金収入が含まれるため、競合の売上高との単純比較は避けます。

ispaceのIR・決算を初心者が読む順番

ispaceの決算は、売上高や最終損益だけを見ると事業進捗を誤解しやすいため、次の順番で確認すると理解しやすくなります。

  1. 契約・採択:正式契約、採択、覚書など、案件の確度を確認する
  2. 技術進捗:設計審査、製造、試験、打上げ、着陸のどこまで進んだか確認する
  3. 売上高:契約のうち会計上どこまで収益化されたか確認する
  4. プロジェクト収益:売上高と補助金収入を合わせた事業進捗を見る
  5. 売上原価・研究開発費:開発費がどの勘定へ計上されているか確認する
  6. 営業キャッシュフロー:年間でどれだけ現金を消費したか確認する
  7. 現金・資金調達:増資や借入後の手元資金と将来の資金需要を確認する

初心者が間違えやすいポイント

プロジェクト収益は会計上の売上高ではありません。また、契約や潜在的需要として示された金額が、同じ年度に全額売上になるわけでもありません。確定実績、獲得済案件、潜在需要、将来計画を分けて読む必要があります。

今後継続して見るべき重要指標

ispaceを見るときは、売上高と損益だけでなく、契約、技術進捗、資金残高をつなげて確認します。

  • 売上高:契約サービスの進捗が会計上どの程度収益化されたか
  • プロジェクト収益:売上高と補助金収入を合わせた事業進捗
  • 補助金収入:営業外収益として損益へ与える影響
  • 獲得済契約・助成金の未計上額:将来計上見込みと条件
  • 契約負債・前受金:受領済み対価と未履行義務の変化
  • 前渡金:部材調達などに先行して支払った資金
  • 売上原価と研究開発費:開発費の計上区分の変化
  • 営業キャッシュフロー:年間の現金消費額
  • 現金及び現金同等物:次の資金調達までの手元流動性
  • 有利子負債:借入増加と返済・利払い負担
  • PDR・試験・打上げ予定:各ミッションの技術的な進捗
  • 契約変更・スケジュール変更:売上・原価・資金需要への影響

ispaceのビジネスモデルに関するよくある疑問

ispaceは何で稼いでいる会社ですか?

ispaceは月面開発事業を単一セグメントとして展開し、顧客の荷物を月へ運ぶペイロードサービス、月面輸送ミッションの開発、政府等の補助金収入、将来のデータサービスなどにより収益化を目指しています。2026年3月期の売上高は33億7百万円、補助金収入を加えたプロジェクト収益は58億90百万円でした。

プロジェクト収益と売上高は同じですか?

同じではありません。会社は、売上高に政府等からの補助金収入を加えてプロジェクト収益を算出しています。2026年3月期は売上高33億7百万円、プロジェクト収益58億90百万円でした。

ispaceの主なサービスは何ですか?

月着陸船や月面探査車を用いて顧客のペイロードを月へ輸送するサービスが中心です。資料では、将来の月周回衛星を活用した通信・測位等のデータサービスも検討されています。

ispaceは黒字ですか?

2026年3月期は営業損失115億80百万円、親会社株主に帰属する当期純損失81億52百万円で、黒字ではありません。

ispaceの売上はいつ計上されますか?

契約や履行義務の内容、開発・輸送サービスの進捗に応じて計上されます。ミッション2については、2025年1月から履行義務の進捗度に基づき収益を認識する方法へ変更されたと説明されています。

補助金は売上高に含まれますか?

決算短信では政府等からの補助金収入は営業外収益に計上され、売上高には含まれません。一方、会社独自の管理指標であるプロジェクト収益には加算されます。

ispaceのキャッシュフローはどうなっていますか?

2026年3月期は営業活動によるキャッシュ・フローが135億68百万円の支出、投資活動が18億25百万円の支出、財務活動が314億47百万円の収入でした。増資や借入で開発資金と手元資金を確保しています。

ispaceの売上構成はどうなっていますか?

ispaceは月面開発事業の単一セグメントで、サービス別・地域別の売上構成は開示していません。2026年3月期のプロジェクト収益58億90百万円は、売上高33億7百万円と補助金収入25億83百万円から構成されています。

ispaceの利益率はどのくらいですか?

2026年3月期の編集部計算では、売上総利益率は約マイナス86.3%、営業利益率は約マイナス350.2%です。開発費や原価が売上を大きく上回っています。

ispaceはなぜ赤字なのですか?

月面ミッションの設計、製造、試験、打上げ準備などの費用が先行する一方、売上は履行進捗などに応じて段階的に計上されるためです。スケジュール変更に伴う損失も原価へ影響しています。

ispaceの主力事業は何ですか?

現在の主力は、月着陸船や月面探査車を用いて顧客のペイロードを月へ輸送するサービスと、関連するミッション開発です。将来は月周回衛星を使った通信・測位・観測データサービスも検討しています。

ispaceのビジネスモデルを3行でまとめると

  • 何で稼ぐ? 顧客の荷物を月へ運ぶ輸送契約、開発受託、政府等の補助事業が現在の中心です。
  • 利益は出ている? 開発費と原価が先行し、2026年3月期は営業赤字です。
  • 何を見る? 契約の確度、ミッション進捗、原価、営業CF、手元資金をセットで確認します。

まとめ

ispaceは、月着陸船や月面探査車を開発し、顧客のペイロードを月へ運ぶ月面輸送サービスを中心に事業化を進めています。 将来は月周回衛星を活用した通信・測位・観測などのデータサービスも検討しています。

2026年3月期の売上高は33億7百万円、補助金収入を加えたプロジェクト収益は58億90百万円でした。 一方、開発費やスケジュール変更に伴う原価が先行し、営業損失は115億80百万円となっています。

現金及び現金同等物は296億90百万円まで増えましたが、これは営業活動で生み出した現金ではなく、大型の増資と借入による財務キャッシュフローが主な要因です。 事業の理解では、売上高、プロジェクト収益、補助金、開発費、営業CF、資金調達を分けて確認します。

今後は、ミッション3以降の設計審査・試験・打上げ・着陸進捗、正式契約への移行、未計上契約の収益化、営業CFの改善が重要です。 会社が示す将来の契約額やスケジュールには条件と不確実性があるため、確定実績と計画を区別して読む必要があります。

参考資料

  • 株式会社ispace「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公表日:2026年5月15日)
  • 株式会社ispace「2026年3月期 通期決算説明資料」(公表日:2026年5月15日)
  • 株式会社ispace 公式IRページ
  • 決算短信:連結業績、財政状態、キャッシュフロー、会計方針、単一セグメント
  • 決算説明資料:ミッション3~5、KPI、損益、販売管理費、貸借対照表、キャッシュフロー
  • 有価証券報告書:今回提供された資料には含まれていません

編集部計算

売上原価率、売上総損失率、販管費率、営業損失率、営業CFと投資CFの単純合計などは、公表された千円または百万円単位の数値を基に計算しています。端数処理により表示値が一致しない場合があります。