最初に確認した資料と記事で扱う範囲

本記事は、オムロン株式会社が2026年8月5日に公表した 「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」を主な一次情報としています。

決算短信から、各事業の売上・利益、財務状態、キャッシュフロー、 非継続事業、IFRS移行、通期業績予想を確認しました。 決算資料に記載されていない製品別利益率、顧客別売上、受注高、市場シェアは、 推測で補っていません。

オムロンは何で稼ぐ会社なのか

オムロンは、工場を自動化する制御機器・センサー・ロボットを 販売する制御機器事業で最も多くの売上と利益を得ています。

最大事業

IABが第1四半期売上の約62.5%を占めました。

主な成長市場

AI半導体、データセンター向け二次電池、工場自動化です。

消費者向け事業

血圧計、体温計、心電計などのヘルスケア製品です。

社会インフラ

鉄道、交通管制、蓄電、UPS、保守サービスを扱います。

「オムロン=血圧計」という印象を持つ人も多いですが、 売上規模と利益では工場自動化向けの制御機器事業が中心です。

オムロンの最新決算を30秒で確認

項目 2027年3月期1Q 前年同期比
売上収益 2,098億64百万円 26.1%増
営業利益 188億57百万円 約3.3倍
税引前四半期利益 184億83百万円 約3.2倍
親会社所有者帰属利益 106億35百万円 約2.3倍
営業利益率 9.0% 5.5ポイント改善

売上収益と営業利益は、前年同期だけでなく会社の期初想定も上回りました。 特に制御機器事業の増収と収益性改善が全社利益を押し上げています。

オムロンの4つの事業

事業 主な製品・サービス 主な顧客
IAB PLC、センサー、モーション制御、産業用カメラ、検査装置、ロボット 半導体、二次電池、自動車、食品、電子部品などの工場
HCB 血圧計、体温計、心電計、ネブライザ、遠隔モニタリング 一般消費者、医療機関、薬局、EC事業者
SSB 蓄電システム、パワコン、駅務、交通管制、UPS、保守 鉄道、道路、住宅、自治体、企業
DSB データヘルス、企業向け健康管理、データ活用、自立支援 保険者、企業、自治体、医療関連事業者

オムロンのビジネスモデル

flowchart LR A["社会・産業課題"] --> B["製品・サービス開発"] B --> C["制御機器・医療機器・社会システム"] C --> D["メーカー・医療・鉄道・住宅へ販売"] D --> E["製品売上"] D --> F["保守・サービス・データ利用"] F --> G["継続売上"] E --> H["利益・キャッシュフロー"] G --> H H --> I["研究開発・M&A・事業投資"]

オムロンは、機器を販売するだけでなく、 ソフトウェア、保守、運用、データ活用を組み合わせて収益を得ます。

オムロンの売上構成|売上100円の内訳

事業 外部収益 構成比 売上100円換算
IAB 1,311億94百万円 約62.5% 約63円
HCB 364億32百万円 約17.4% 約17円
SSB 242億49百万円 約11.6% 約12円
DSB 130億65百万円 約6.2% 約6円
消去調整ほか 49億24百万円 約2.3% 約2円

売上100円のうち約63円が制御機器事業です。 オムロンの業績を理解するうえでは、IABの売上と利益が最重要となります。

制御機器事業はどのように稼ぐのか

IABは、工場の設備を動かし、状態を測り、品質を検査し、 人や装置の安全を守る製品を販売します。

制御

PLCやモーションコントローラで設備の動きを制御します。

検知

センサーが位置、温度、距離、状態を検出します。

検査

カメラ・コードリーダ・検査装置で品質を確認します。

搬送・作業

産業用ロボットが搬送や組み立てを自動化します。

第1四半期のIAB外部収益は1,311億94百万円で37.2%増、 営業利益は212億52百万円で約2倍となりました。

FA・工場自動化とは何か

FAはFactory Automationの略で、 工場の生産工程を機械、センサー、ソフトウェア、ロボットで自動化することです。

人手不足、生産性向上、品質安定、トレーサビリティ、 多品種少量生産などの課題に対応するため、 工場では制御機器への投資が行われます。

オムロンとAI・半導体・二次電池投資の関係

生成AIの普及によって半導体工場やデータセンターへの投資が増えると、 製造設備に使われるセンサー、制御機器、ロボット、検査装置の需要が増える可能性があります。

また、データセンターでは非常用電源や電力安定化のため二次電池が使われます。 二次電池工場の設備投資が増えることも、IABの需要増加につながります。

オムロンはAIチップを作る会社ではなく、 AI関連設備を生産する工場の自動化を支える会社と整理できます。

ヘルスケア事業はどのように稼ぐのか

HCBは、血圧計、体温計、心電計、ネブライザ、 低周波治療器、体重体組成計、遠隔患者モニタリングなどを販売します。

第1四半期の外部収益は364億32百万円で16.7%増、 営業利益は24億1百万円で約2倍となりました。

日本・アジアのオンライン販促が血圧計販売を押し上げました。 消費者向け製品のため、季節、販促、EC、流通在庫、為替の影響を受けます。

血圧計ビジネスの収益構造

血圧計は本体販売が中心ですが、ブランド、測定精度、使いやすさ、 医療機関との信頼関係、流通網、オンライン販売が競争力に影響します。

遠隔患者モニタリングや健康データとの連携が進めば、 機器販売だけでなく継続サービスへ発展する可能性があります。 ただし、今回の資料ではサービス別売上は開示されていません。

社会システム事業は何で稼ぐのか

SSBは、蓄電システム、太陽光発電用パワーコンディショナー、 駅務システム、交通管制、道路管理、UPS、インフラモニタリング、 保守メンテナンスなどを扱います。

第1四半期の外部収益は242億49百万円で2.0%減、 営業利益は64百万円でした。 蓄電システムが低調だった一方、鉄道と保守サービスが堅調でした。

データソリューション事業は何で稼ぐのか

DSBは、健康保険組合や企業向けのデータヘルス、 健康管理、データ活用、マネジメントサービス、自立支援などを扱います。

第1四半期の外部収益は130億65百万円で22.8%増、 営業利益は2億53百万円となり、前年同期の赤字から黒字化しました。

電子部品事業はなぜ非継続事業なのか

オムロンはDMB(電子部品事業)の譲渡を決定し、 継続事業から分離して非継続事業として表示しています。

2026年7月に事業承継会社の商号をAratas株式会社へ変更し、 2026年10月1日の株式譲渡を予定しています。

第1四半期の非継続事業売上は286億12百万円、 非継続事業からの四半期損失は33億95百万円でした。 全社純利益を見る際は、継続事業の利益と非継続事業の損失を分けて確認します。

オムロンの利益が増減する仕組み

IABの販売数量

半導体・電池・自動車の設備投資が売上を左右します。

製品構成

高付加価値製品とサービスの比率で利益率が変わります。

販管費

販売、管理、人件費、IT投資が利益を押し下げます。

研究開発費

新製品・ソフトウェア開発の費用が発生します。

為替

海外売上が大きく、円安・円高の影響を受けます。

構造改革

事業売却、減損、収益性改善施策が利益を変動させます。

第1四半期は売上総利益率が45.5%から46.5%へ改善し、 営業利益率は3.5%から9.0%へ上昇しました。

オムロンの2027年3月期第1四半期決算

項目 前年同期 当四半期 増減率
売上収益 1,664億80百万円 2,098億64百万円 26.1%増
売上総利益 757億4百万円 974億90百万円 28.8%増
営業利益 57億84百万円 188億57百万円 226.0%増
継続事業利益 50億77百万円 143億53百万円 182.7%増
親会社所有者帰属利益 46億1百万円 106億35百万円 131.1%増

オムロンの2027年3月期業績予想

項目 期初予想 修正予想 前期比
売上収益 8,200億円 8,800億円 14.6%増
営業利益 620億円 800億円 41.7%増
税引前利益 610億円 790億円 46.9%増
継続事業利益 450億円 580億円 50.5%増
親会社所有者帰属利益 275億円 405億円 82.1%増

好調なIABの事業環境と第1四半期実績を受け、 売上・利益予想を上方修正しました。

オムロンの財務状態

項目 前期末 1Q末 増減
資産合計 1兆3,633億59百万円 1兆3,841億40百万円 207億81百万円増
現金及び現金同等物 1,666億3百万円 2,178億68百万円 512億65百万円増
棚卸資産 1,542億8百万円 1,611億17百万円 69億9百万円増
資本合計 8,548億98百万円 8,643億84百万円 94億86百万円増

親会社所有者帰属持分比率は60.1%で、 手元現預金2,179億円と700億円のコミットメントラインを確保しています。

オムロンのキャッシュフロー

項目 2027年3月期1Q
営業活動によるCF 639億69百万円の収入
投資活動によるCF 302億56百万円の支出
財務活動によるCF 139億62百万円の収入
期末現金同等物 2,178億68百万円

営業CFは退職給付信託の一部返還などの影響を含みます。 一時要因を除いた本業の現金創出力は、複数四半期で確認する必要があります。

研究開発費はどのくらいか

第1四半期の研究開発費は132億3百万円で、 前年同期の110億円から増加しました。

制御機器、ロボット、画像処理、医療機器、データサービスなど、 複数分野の競争力維持に研究開発が必要です。

IFRS移行で何が変わったのか

オムロンは2027年3月期第1四半期からIFRSを適用しました。 2026年3月期第1四半期と前期末の数値もIFRSベースへ組み替えています。

IFRS移行では、のれん、退職給付、リース、金融商品、 有形固定資産などの表示・測定が変更されています。

過去の米国会計基準の数値と単純比較すると差異が生じるため、 比較時は同じ会計基準の数字を使う必要があります。

オムロンの強みは何か

FAの製品群

制御、検知、検査、ロボットを幅広く提供します。

成長市場への接点

半導体、二次電池、データセンター投資を取り込みます。

ヘルスケアブランド

血圧計を中心に家庭用医療機器を展開します。

社会インフラ実績

鉄道、道路、蓄電、保守の事業基盤があります。

データ事業

機器販売からデータ活用サービスへ広げています。

財務基盤

自己資本比率60%台と手元流動性を確保しています。

オムロンのリスクと弱み

設備投資循環

半導体や電池の投資減速でIABが影響を受けます。

中国景気

中国の製造業投資や消費の減速が業績へ影響します。

蓄電の競争

住宅向け再エネ市場では競争環境が厳しくなっています。

為替

海外売上が大きく、円高・円安で業績が変動します。

事業再編

DMB譲渡費用と一時損失が純利益へ影響します。

のれん・無形資産

M&A事業の業績悪化時に減損リスクがあります。

オムロンの決算で確認したい重要指標

  • IAB売上:半導体・二次電池設備投資を取り込めているか
  • IAB営業利益:増収が利益率改善につながっているか
  • HCB売上:血圧計とオンライン販売が伸びているか
  • SSB利益:蓄電の不振を鉄道・保守で補えているか
  • DSB利益:データ事業の黒字が定着するか
  • 営業利益率:全社収益性改善が継続しているか
  • 研究開発費:投資増が新製品・売上へつながるか
  • 棚卸資産:需要回復に対して在庫が適正か
  • 営業CF:一時要因を除いて利益が現金化しているか
  • DMB譲渡:譲渡損益と資金流入を確認する
  • IFRS差異:過年度比較で会計基準をそろえる
  • 為替前提:ドル・ユーロ・人民元の実績との差を見る

オムロンのビジネスモデルに関するよくある疑問

オムロンは何で稼いでいる会社ですか?

工場自動化向けの制御機器、センサー、ロボットを中心に、 血圧計、鉄道・蓄電システム、データサービスでも稼いでいます。

オムロンの主力事業は何ですか?

制御機器事業のIABです。第1四半期売上の約62.5%を占めました。

オムロンはAI関連企業ですか?

AI半導体を直接製造する会社ではありませんが、 AI向け半導体・データセンター・二次電池工場の設備投資に関係します。

血圧計はどの事業ですか?

ヘルスケア事業のHCBです。

利益が増えた理由は何ですか?

IABの増収、収益性改善、HCBの増収、為替などが寄与しました。

電子部品事業はどうなりますか?

DMBは非継続事業となり、譲渡手続きが進められています。

2027年3月期の業績予想は?

売上収益8,800億円、営業利益800億円を予想しています。

IFRS移行で注意することは?

過去の米国会計基準の数字と単純比較せず、IFRS組み替え後の数値を使います。

決算では何を見ればよいですか?

IABの売上・利益、HCB、SSB、DSB、営業利益率、DMB譲渡、キャッシュフローを確認します。

まとめ

オムロンは、工場自動化向けの制御機器事業を主力に稼ぐ会社です。 売上100円のうち約63円がIABから生まれています。

AI需要を背景とする半導体設備投資と、 データセンター向け二次電池投資の拡大が追い風となっています。

血圧計などのヘルスケア、鉄道・蓄電・保守などの社会システム、 データヘルスも事業の柱です。

今後は、IABの成長と利益率改善が続くか、 DMB譲渡後の事業構成、SSBの採算、DSBの黒字化、 キャッシュフローと研究開発投資を確認する必要があります。

参考資料

  • オムロン株式会社 「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」 (公表日:2026年8月5日)
  • 業績・通期予想:決算短信1~7ページ
  • 財政状態:決算短信8~9ページ
  • 損益計算書:決算短信10ページ
  • キャッシュフロー:決算短信12ページ
  • セグメント情報:決算短信14~15ページ
  • 非継続事業:決算短信16ページ
  • IFRS初度適用:決算短信17ページ以降

編集部計算

事業別構成比、売上100円換算、利益率などは、 会社公表値を基にした編集部計算です。 表示上は億円・小数単位を丸めています。