最初に確認した資料
一次情報は、 横浜ゴム株式会社が 2026年8月10日に公表した 「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」です。
資料では、 タイヤ、 MB、 その他のセグメント別売上・事業利益、 タイヤ消費財、 OHT、 ホース配管、 工業資材の業績説明、 財政状態、 キャッシュフローまで確認できます。
一方、 車種別タイヤ売上、 顧客企業別売上、 個別工場の生産能力、 地域別利益率、 製品別粗利率などは 今回の短信からは確認できません。
横浜ゴムは何の会社か
横浜ゴムは、 各種タイヤを主力に、 工業用ゴム製品や航空部品なども扱う企業 です。
事業セグメントは 「タイヤ」 「MB」 「その他」 に分かれています。
参照期間では、 タイヤ事業が連結売上収益の90.8%を占めています。
そのため、 横浜ゴムの全社業績を理解する中心は タイヤ事業です。
ただし、 タイヤの中でも 乗用車用だけでなく OHTなどの高収益領域があり、 さらにMB事業も 利益改善へ寄与しています。
横浜ゴムは何で稼いでいるのか
最大の収益源は タイヤ事業です。
2026年1~6月の タイヤ事業売上収益は 5,803億60百万円、 事業利益は 890億29百万円でした。
MB事業は 売上収益548億63百万円、 事業利益63億17百万円です。
その他事業は 売上収益41億73百万円、 事業利益4億98百万円です。
つまり、 タイヤを主力としつつ、 ホース、 コンベヤベルト、 航空部品などのMB事業でも利益を得る という構造です。
横浜ゴムは何を作っているのか
| セグメント | 主要製品 |
|---|---|
| タイヤ | 乗用車用、 トラック・バス用、 小型トラック用、 農業機械用、 鉱山・建設車両用、 産業車両用、 林業機械用などの各種タイヤ、 チューブ、 アルミホイール、 自動車関連用品 |
| MB | コンベヤベルト、 各種ホース、 防舷材、 オイルフェンス、 マリンホース、 航空部品 |
| その他 | スポーツ事業等 |
この製品一覧を見ると、 横浜ゴムは 「乗用車タイヤだけの会社」 ではないことが分かります。
横浜ゴムのビジネスモデル
この図は、 決算短信の製品、 販売区分、 原価、 利益要因を 編集部が整理した概念図です。
タイヤ事業|全社売上の約91%
タイヤ事業の売上収益は 5,803億60百万円で、 前年同期比10.8%増でした。
事業利益は 890億29百万円で、 前年同期比57.3%増です。
タイヤ事業の中には 乗用車用などの消費財タイヤと、 農機・鉱山・建設車両などに使われる OHTが含まれます。
タイヤ消費財|新車用と市販用
新車用タイヤは、 中国での日系自動車メーカー販売不振の影響がありました。
それでも、 国内で横浜ゴムの納入車種販売が好調だったことなどから 前年同期を上回りました。
市販用タイヤも 前年同期を上回っています。
国内では丁寧な販売活動、 欧州ではハイインチ品を中心とした 高付加価値商品の販売増、 各地域での新規開拓や既存顧客との取引拡大が 寄与しました。
OHTとは何か|横浜ゴムの重要な収益領域
OHTは 「オフハイウェイタイヤ」 を指します。
資料に記載された主要製品では、 農業機械用、 鉱山・建設車両用、 産業車両用、 林業機械用などのタイヤが含まれます。
会社はOHTについて、 厳しい需要環境下でも 「需要サイクルに左右されない収益構造を確保」 する方針を徹底したと説明しています。
高い収益性を維持しながら 販売を伸ばしたことが、 全社利益改善の重要要因です。
農機用タイヤ|顧客関係と販売数量
農機用タイヤの新車用では、 製品や技術への投資を通じた 顧客との関係強化によって 販売数量が順調に推移しました。
ここでは 「顧客関係強化」 と 「販売数量増」 が会社説明で直接結びついています。
ただし、 顧客企業名や販売数量の絶対値は 今回の短信にはありません。
Mitas・Allianceのマルチブランド戦略
OHTの市販用では、 「Mitas」 「Alliance」 などのマルチブランド戦略が 会社説明に登場します。
新商品の積極投入も奏功し、 北米を中心に販売が好調でした。
ブランドごとの売上高・利益率は 今回の資料では開示されていません。
MB事業|タイヤ以外の収益源
MBは マルチプル・ビジネスです。
売上収益は 548億63百万円で、 連結売上収益の8.6%を占めます。
事業利益は 63億17百万円です。
タイヤと比べると規模は小さいものの、 ホース、 工業資材、 航空部品など 異なる需要先を持つ事業です。
ホース配管事業
ホース配管事業では、 国内外の油圧事業における 市販用の強化と 丁寧な販売活動が奏功し、 売上収益が前年同期を上回りました。
個別製品別、 地域別の売上は 今回の資料にありません。
工業資材・航空部品
工業資材事業では、 コンベヤベルトの販売拡大によって 高シェアを維持したと会社は説明しています。
また、 過年度から注力してきた 航空部品の官需売上が伸びました。
ただし、 シェアの具体的数値や 航空部品の顧客、 契約先は今回の資料にありません。
売上構成|タイヤ90.8%、MB8.6%
| 事業 | 売上収益 | 構成比 |
|---|---|---|
| タイヤ | 5,803億60百万円 | 90.8% |
| MB | 548億63百万円 | 8.6% |
| その他 | 41億73百万円 | 約0.7% |
| 連結 | 6,393億97百万円 | 100% |
その他の構成比は編集部計算です。
横浜ゴムは タイヤへの売上集中度が高い企業です。
利益構成|利益もタイヤが中心
| 事業 | 事業利益 | 全社事業利益に占める比率 |
|---|---|---|
| タイヤ | 890億29百万円 | 約92.9% |
| MB | 63億17百万円 | 約6.6% |
| その他 | 4億98百万円 | 約0.5% |
利益構成比は編集部計算です。
売上構成以上に タイヤ事業の利益貢献が大きくなっています。
事業別利益率
| 事業 | 売上収益 | 事業利益 | 単純計算利益率 |
|---|---|---|---|
| タイヤ | 5,803億60百万円 | 890億29百万円 | 約15.3% |
| MB | 548億63百万円 | 63億17百万円 | 約11.5% |
| その他 | 41億73百万円 | 4億98百万円 | 約11.9% |
利益率は編集部計算です。
全社事業利益率は 15.0%でした。
タイヤ事業の単純計算利益率が 全社を上回っており、 主力事業の採算改善が 全社利益率を押し上げています。
原材料高に対する価格転嫁
OHTでは、 足元の原材料高に対して 機動的な価格転嫁を進めたと 会社は説明しています。
タイヤ事業では 原材料価格の上昇が 売上原価を押し上げる可能性があります。
その一方で、 販売価格へ転嫁できれば 利益率低下を抑えやすくなります。
今回の資料では、 原材料高の金額と 価格転嫁効果の金額は 個別に開示されていません。
横浜ゴムの利益を動かす要因
販売数量
OHTや農機用タイヤの販売数量増。
製品ミックス
高付加価値商品やハイインチ品の販売増。
価格転嫁
原材料高への販売価格対応。
コスト改善
抜本的コスト改善の積み増し。
構造改革
内部努力による収益性改善。
MB収益性
既存事業の収益性改善。
売上総利益と原価
| 項目 | 2026年1~6月 | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 6,393億97百万円 | 100% |
| 売上原価 | 3,919億73百万円 | 約61.3% |
| 売上総利益 | 2,474億24百万円 | 約38.7% |
| 販管費 | 1,515億78百万円 | 約23.7% |
| 事業利益 | 958億46百万円 | 15.0% |
売上原価率などは編集部計算です。
売上原価の 原材料費、 人件費、 減価償却費などの詳細構成は 今回の短信にはありません。
営業利益には一時損益が含まれる
事業利益は958億46百万円ですが、 営業利益は1,096億99百万円です。
会社は、 米国セーラム工場閉鎖に伴う 一時費用149億52百万円を計上した一方、 旧イスラエル工場敷地の 固定資産売却益353億2百万円を計上したと説明しています。
したがって、 営業利益が事業利益より大きいことを 本業の採算改善だけで説明するのは適切ではありません。
企業の継続的な稼ぐ力を見る場合は、 事業利益と一時損益を分けて確認する必要があります。
資産構成|総資産2.17兆円
2026年6月末の総資産は 2兆1,705億42百万円です。
| 主な資産 | 2025年12月末 | 2026年6月末 |
|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 1,073億91百万円 | 1,470億59百万円 |
| 営業債権等 | 3,339億87百万円 | 3,684億74百万円 |
| 棚卸資産 | 3,190億55百万円 | 3,728億91百万円 |
| 有形固定資産 | 6,342億66百万円 | 6,728億10百万円 |
| のれん | 3,328億99百万円 | 3,404億38百万円 |
| 無形資産 | 1,264億38百万円 | 1,236億5百万円 |
在庫、 有形固定資産、 のれんが大きく、 製造設備と事業取得資産の両方を持つ 財務構造です。
棚卸資産|半年で538億円増加
棚卸資産は 3,190億55百万円から 3,728億91百万円へ増加しました。
増加額は 538億36百万円、 約16.9%増です。
キャッシュフロー計算書でも、 棚卸資産増加が 469億53百万円の資金流出要因となっています。
ただし、 原材料、 仕掛品、 製品別の内訳は 今回の短信では開示されていません。
有形固定資産|設備を使う製造業
有形固定資産は 6,728億10百万円です。
半年間で 385億44百万円増加しました。
投資キャッシュフローでは 有形固定資産取得による支出が 598億51百万円あります。
タイヤやMB製品を製造するため、 大きな設備資産を必要とする事業構造が 財務諸表に表れています。
一方、 工場別の設備投資額や生産能力は 今回の短信では確認できません。
のれん・無形資産
2026年6月末ののれんは 3,404億38百万円です。
無形資産は 1,236億5百万円です。
これらは 過去の企業買収や事業取得などによって 認識された資産を含む可能性があります。
ただし、 今回の短信だけでは のれんの対象事業別内訳や 減損テストの詳細までは分かりません。
有利子負債の増加
会社は、 2026年6月末の負債増加について 主に有利子負債が増加したことを挙げています。
社債及び借入金は、 流動負債で2,382億53百万円、 非流動負債で3,769億69百万円です。
合計すると 6,152億22百万円となります。
投資、 運転資金、 株主還元を行うための 資金調達構造も確認する必要があります。
営業キャッシュフローは87億82百万円の支出
税引前中間利益は 1,108億18百万円でしたが、 営業活動によるキャッシュフローは 87億82百万円の支出です。
| 主な要因 | 金額 |
|---|---|
| 税引前利益 | +1,108億18百万円 |
| 減価償却費等 | +417億99百万円 |
| 固定資産除売却損益 | △361億90百万円 |
| 売上債権増加 | △59億77百万円 |
| 棚卸資産増加 | △469億53百万円 |
| 法人所得税支払 | △710億81百万円 |
大きな会計利益を計上していても、 在庫増加や税金支払によって 営業CFはマイナスになることがあります。
投資キャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは 120億58百万円の支出です。
有形固定資産取得による支出は 598億51百万円です。
一方、 有形固定資産売却による収入は 551億91百万円ありました。
旧イスラエル工場敷地の売却益が 損益へ大きく影響したことと合わせて、 資産売却の現金流入も確認できます。
財務キャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローは 567億11百万円の収入です。
短期借入金の純増加が 528億77百万円、 コマーシャル・ペーパーの純増加が 560億円でした。
一方、 長期借入金返済314億30百万円、 配当金支払133億98百万円などの 資金流出もあります。
利益と現金のズレ
横浜ゴムでは 損益が非常に好調だった一方、 営業CFはマイナスでした。
利益だけを見るのではなく、 在庫、 税金、 設備投資、 資産売却、 借入の動きを合わせて見る必要があります。
IR資料から確認できる強み
タイヤ事業の高い利益率
参照期間の単純計算利益率は約15.3%。
OHTの高収益性
会社が高い収益性を維持して販売を伸ばしたと説明。
高付加価値商品
AGWやハイインチ品の販売増が利益に寄与。
MB事業
ホース、コンベヤ、航空部品などタイヤ以外の収益源。
価格対応
OHTでは原材料高への機動的価格転嫁を実施。
複数ブランド
Mitas、Allianceなどを展開。
ただし、 これらの事実が 競合他社より優れていることを 直接証明するものではありません。
横浜ゴムのリスク
原材料価格
価格上昇を販売価格へ転嫁できるかが重要。
自動車販売
新車用タイヤは自動車メーカー販売動向の影響を受ける。
OHT需要
農機・鉱山・建設等の需要環境に左右される可能性。
在庫
棚卸資産が大きく増えると資金負担が増える。
設備投資
大きな有形固定資産を持つため資本負担がある。
一時損益
工場閉鎖費用や固定資産売却益で営業利益が変動。
他社と比較するときの視点
| 比較項目 | 意味 |
|---|---|
| タイヤ売上構成 | 主力事業への依存度を見る |
| タイヤ事業利益率 | 主力事業の採算を見る |
| OHT比重 | 高収益領域の寄与を確認する |
| 高付加価値商品の販売 | 製品ミックス改善を見る |
| 価格転嫁 | 原材料高への対応力を見る |
| 棚卸資産 | 在庫・運転資金負担を見る |
| 設備投資 | 製造能力への資本投入を見る |
| 営業CF | 利益が現金化されているかを見る |
今後のIRで見るべき重要指標
- タイヤ売上: 全社売上の約9割を占める主力事業の動き
- タイヤ事業利益率: 高付加価値化と価格転嫁の成果
- OHT: 販売数量と高収益性が維持できるか
- ハイインチ品: 高付加価値商品の販売構成
- 農機用タイヤ: 新車用・市販用の販売動向
- MB利益率: 収益性改善が続くか
- 原材料価格: 価格転嫁とのバランス
- 棚卸資産: 在庫増加が資金を圧迫していないか
- 有形固定資産: 設備投資と減価償却負担
- 営業CF: 利益が現金化されているか
- 有利子負債: 投資・運転資金をどう調達しているか
- 一時損益: 営業利益と事業利益の差
横浜ゴムに関するよくある疑問
横浜ゴムは何の会社ですか?
乗用車用、 トラック・バス用、 農業機械用、 鉱山・建設車両用などの各種タイヤを主力とし、 ホース、 コンベヤベルト、 航空部品なども扱う企業です。
何で稼いでいますか?
主力はタイヤ事業です。 参照期間では売上収益の90.8%を占めます。
OHTとは何ですか?
オフハイウェイタイヤのことで、 農業機械、 鉱山・建設車両、 産業車両、 林業機械などに使われるタイヤです。
MBとは何ですか?
マルチプル・ビジネスで、 コンベヤベルト、 各種ホース、 防舷材、 マリンホース、 航空部品などを扱います。
利益率が高い理由は何ですか?
会社は、 高付加価値商品販売増、 OHTでの高収益を伴う販売数量増、 MB収益性改善、 コスト改善や構造改革などを増益要因として挙げています。
在庫は増えていますか?
はい。 棚卸資産は 2025年12月末3,190億55百万円から 2026年6月末3,728億91百万円へ増加しています。
営業利益と事業利益はなぜ違いますか?
営業利益には 工場閉鎖費用や固定資産売却益など その他の収益・費用が反映されるためです。
営業キャッシュフローがマイナスなのは問題ですか?
1期間だけでは判断できません。 参照期間は在庫増加と法人所得税支払などが 大きな資金流出要因でした。
まとめ
横浜ゴムは、 各種タイヤを主力とし、 コンベヤベルト、 ホース、 航空部品などのMB事業も展開する企業です。
参照期間では タイヤ事業が売上収益の90.8%、 事業利益の約92.9%を占め、 全社業績の中心となっています。
タイヤ事業の中でも、 OHTの高収益性、 高付加価値商品、 ハイインチ品、 農機用タイヤ、 価格転嫁が利益の重要テーマです。
MB事業では ホース配管、 コンベヤベルト、 航空部品などが タイヤ以外の収益源となっています。
財務面では、 棚卸資産が3,728億91百万円、 有形固定資産が6,728億10百万円と大きく、 在庫と設備に多くの資金を使う製造業型の構造が見えます。
また、 営業利益には 工場閉鎖費用や固定資産売却益が含まれるため、 本業の収益力を見る際は 事業利益を合わせて確認することが重要です。
参考資料
- 横浜ゴム株式会社 「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」 (公表日:2026年8月10日)
- 連結業績・財政状態: PDF 1ページ
- タイヤ・MBの業績説明: PDF 4~5ページ
- 資産・棚卸資産・有形固定資産: PDF 6ページ
- 負債・資本: PDF 7ページ
- 売上収益・売上原価・事業利益・営業利益: PDF 8ページ
- キャッシュフロー: PDF 12ページ
- 主要製品: PDF 13ページ
- セグメント売上・事業利益: PDF 14ページ
編集部計算
事業別利益構成比、 事業別単純計算利益率、 売上原価率、 売上総利益率、 販管費率、 棚卸資産増加率などは 会社公表値を基に編集部が計算しています。